仕事を始めようとして、まず探し物から入る朝があります。
必要なデータはどこだったか。
昨日の続きは、どのフォルダだったか。
探し終えたころには、肝心の仕事に向かう気持ちが少し削れています。
神職だったころの私は、仕事の前に場所を整えることを、仕事の一部だと考えていました。
この記事では、そのとき身についた習慣が、今のデスクまわりにどう続いているのかを書きます。
神事の話ではなく、机とパソコンの中の話です。
ただ、私はこの習慣に、「祓い」と呼ばれてきたものと近い感覚を持っています。

「プチ大祓」と呼ぶ前に
先に、言葉の線引きをしておきます。
大祓(おおはらえ)は、6月と12月の末に神社で行われる神事です。
半年のあいだに積もった罪や穢れを祓い、心身を新しくします。
ここで書くのは、その大祓そのものではありません。
「いったん祓って、整え直す」という心だけを借りた、日々の小さな習慣です。
だから「プチ」と付けています。
大祓の本来の意味や、穢れと祓いの関係は、こちらで詳しく書いています。
狭い場所ほど、整えてから始める
神社の仕事には、とても狭い場所での作業があります。
たとえば、たくさんの榊に紙垂(しで)を付ける作業。
あるいは、御祈祷のお下がりの品々を組む作業。
数は多いのに、置ける場所は限られています。
道具があちこちにあると、手を伸ばすたびに探すことになります。
だから私は、神職の仲間にも巫女にも、整理整頓を徹底するよう伝えていました。
散らかった瞬間に、手が止まる場所だったからです。
これは、私の性格の問題でもあります。
物が散乱していると、穏やかな気持ちで仕事ができません。
整っていれば集中できますし、「終わったら元に戻しておきたい」という気持ちも自然に湧きます。
見える場所と、見えない場所で、整え方を変える
整え方は、場所によって変えていました。
参拝者の方から見える場所では、物をなるべく置きません。
神社らしい、すっきりとした空間を保つためです。
スタッフしか見ない裏の場所では、作業効率を最優先にしました。
道具は使う順に、手の届くところへ。
見た目よりも、動きやすさです。
表は、迎える方のために。
裏は、働く自分たちのために。
裏が整っているから、表で落ち着いて人をお迎えできる。
私はそう感じていました。
御守りの在庫を、4つの場所に分けて持つ

裏の整え方でいちばん覚えているのは、御守りの在庫管理です。
私の勤めていた神社では、御守りを次の4つの状態に分けて、場所を変えて置いていました。
- 授与所で、参拝者の方が受けられるよう、折敷(おしき)に並べたもの
- 数を合わせて、折敷にきれいにまとめて置いておくもの
- 10体ずつ紙を巻いて、箱に入れたもの(追加するときは10体単位)
- 納品されたままの、箱の状態のもの
最初からこの形だったわけではありません。
何年もかけて、スタッフみんなで試行錯誤しながら、いちばんやりやすい形に整えていきました。
その結果、そこで働く全員が、どこに何があるかを分かっている状態になりました。
棚卸しの日は、たくさんの在庫を順序どおりに数えていけば終わります。
誰がやっても、迷いません。
整えるのは、自分ひとりのためだけではありませんでした。
次にその場所に立つ誰かが、迷わず動けるようにするためでもありました。
御守りの扱い方そのものについては、こちらも読んでみてください。
→ 神社のお守りの正しい扱い方|返納時期・複数持ち・古いお守りはどうする?
中断されても、すぐ戻れる机にしておく
神社の事務仕事は、ひとつのことを最後まで続けられる日ばかりではありません。
書類をつくっている最中に、御祈祷のご依頼が入ります。
手を止めて、社殿へ向かいます。
戻ってきたとき、机が散らかっていたらどうでしょう。
どこまで進んだのか、何が必要だったのか、思い出すところから始めることになります。
だから私は、始める前に、資料を優先順位ごとに整理していました。
今日いちばん先に終わらせるもの。
次に触れるもの。
後回しにできるもの。
そう置いておけば、中断されて戻ってきても、続きからすぐ取りかかれます。
整えておくのは、集中するためだけではありません。
中断されることを前提に、戻る場所をつくっておくことでもありました。
御守りの扱い方そのものについては、こちらも読んでみてください。
→ 神社のお守りの正しい扱い方|返納時期・複数持ち・古いお守りはどうする?
整っていた場所が崩れたとき

逆に、散らかっていて困った経験もあります。
私が勤めた神社は、なぜか、建て替えや、システムの見直しや、何年も手つかずだった倉庫の整理に当たることが多い職場でした。
神社ですから、外祭や祭り、お休みで、その日いない人もいます。
担当が入れ替わると、どこまで作業が進んだのかが分かりません。
そのたびに、確認から始めることになりました。
建て替えのときは、荷物をいったん仮置きの場所へ運ぶため、箱詰めをします。
ここでも、人が変わると、どの箱に何を入れたのか、その箱をどこに置いたのかが分からなくなりました。
もちろん、そのときの段取りが悪かった部分もあります。
それでも、普段整っていた場所を崩すと、あっという間にごちゃごちゃになる、と実感しました。
元に戻すのにも、思った以上に時間がかかりました。
動画編集者のデスク整理|パソコンの中を整える
今の私の仕事は、動画編集です。
神社のころと違って、書類がたまることはほとんどありません。
整理の中心は、パソコンの中になりました。
動画ごとにフォルダをつくります。
その中に、撮影データ、音声データ、素材データを分けて入れておきます。
フォルダのイメージ
- 動画ごとのフォルダ
- 撮影データ
- 音声データ
- 素材データ
動画編集では、いったん置いた場所から、データを動かさないことが大切です。
編集を進めていたのに、フォルダを移動したせいでデータが見つからず、探す工程が増える。
そういうことが起こるからです。
だから、編集を始める前に、素材のフォルダ分けをきちんとするところから始めます。
神社で、始める前に資料を優先順位に分けていたことと、動作はよく似ています。
デスク周りを整える3つの手順|朝5分の習慣
私が続けている手順は、次の3つです。
- 動画ごとにフォルダをつくる
- 撮影・音声・素材データを分けて入れる
- 編集が始まったら、元の場所から動かさない
習慣になっていれば、朝の5分ほどで済みます。
その日の状態によって時間は変わりますが、この数分を省いた日は、仕事に入るまでが遠く感じます。
物の多い机の方は、手順1・2を「散らばった道具を集める」「優先順位ごとに並べる」と読み替えても使えます。
祓いとは、本来の場所に戻すこと
最後に、なぜこの習慣を「祓い」と呼びたくなるのかを書きます。
私は、祓いを「余計なものを取り除いて、本来の状態に戻すこと」と受け止めています。
机の上に重なった資料や、探しても見つからないデータは、それ自体が悪いものではありません。
置き場所を失ったままになることで、使う人の気持ちを落ち着かなくさせます。
御守りの在庫を棚卸しした日も、フォルダを開いて迷わずデータに手が届いた日も、同じ感覚がありました。
物が元の場所に戻ると、座っている自分の気持ちも、ひとつ前の状態に戻る。
私にとって、それが「プチ大祓」の中身です。
朝に窓を開けて風を通す習慣も、同じ感覚でした。
雨の音に「祓い」を感じた日のことは、こちらに書いています。
明日の朝、机を前にしたら

整え方に、正解はありません。
私のように、整っていないと落ち着かない人もいれば、散らかっているほうが動きやすい人もいます。
ただ、もし仕事に入るまでの時間が長いと感じているなら。
明日の朝、座る前に、机の上のものをひとつ、あるいはパソコンの中のフォルダをひとつ、元の場所に戻してみてください。
それだけで、仕事の入口が少し近くなります。
あなたの机は、今日の仕事を迎える準備ができていますか。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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