椿大神社とは?猿田彦大神の総本宮で知る「みちびき」の意味|参拝ガイドと交通安全祈祷の本当の意味【元神職が解説】

椿大神社と森の参拝ガイド 神社を訪ねる

椿大神社の参道に入ると、まず目に入るのは空を覆う木々です。

足もとにも水の流れがあり、歩くほどに空気がひんやりと変わっていきます。

全国に二千社あまりある猿田彦大神の神社の総本宮、三重県鈴鹿市の椿大神社。

この記事では、参拝順路やアクセスに加えて、参道で通り過ぎやすい3つの場所と、神職時代に「交通安全の御祈祷」をめぐって考え込んだ出来事をお話しします。

椿大神社の参道のように、深い木々に覆われた森の道と流れる水
  1. 椿大神社とは?猿田彦大神を祀る総本宮
  2. 猿田彦大神とは?天孫降臨の道を開いた「みちびきの神」
  3. 椿大神社を知ったきっかけは、松下幸之助さんの本でした
  4. 深い森と水の境内|何度か参拝して感じたこと
  5. 椿大神社の基本情報
    1. アクセス
  6. 参拝の順路モデルコース(2パターン)
    1. 初めての方向け|約60分
    2. じっくり巡りたい方向け|約2時間30分
  7. 見逃せない7つの見どころ
    1. 1. 高山土公神陵(たかやまどこうしんりょう)|猿田彦大神の御陵
    2. 2. 本殿・拝殿|猿田彦大神にご挨拶
    3. 3. 別宮 椿岸神社|天之鈿女命を祀る
    4. 4. かなえ滝|椿岸神社のすぐ隣
    5. 5. 龍神三社|庚龍神社・龍蛇神両地神社・椿立雲龍神社
    6. 6. 鈴松庵|松下幸之助さん寄進の茶室
    7. 7. 松下幸之助社|人をお祀りする社
    8. 見どころ以外にも目を向けたい場所
  8. 授与品と御朱印|椿大神社でいただけるもの
    1. 御朱印(4種類)
    2. 車のお祓い・交通安全の御祈祷
    3. お守りの扱い方
  9. 季節別・年間行事のおすすめ
  10. 参拝のあとに立ち寄りたい周辺スポット
  11. 交通安全の御祈祷で、元神職がずっと考えてきたこと
    1. 同僚の車をお祓いした日
    2. 神社には、こうしたお電話が入ります
    3. 御祈祷は「叶えてもらう場」ではなく「宣言する場」
    4. 出発の前に
  12. 役目を終えて、自分の道へ進むということ
  13. 行ってみたくなる、椿大神社

椿大神社とは?猿田彦大神を祀る総本宮

椿大神社(つばきおおかみやしろ)は、三重県鈴鹿市の入道ヶ岳の麓に鎮座する神社です。

地元では親しみを込めて「椿さん」と呼ばれています。伊勢国一之宮でもあります。

主祭神は猿田彦大神(さるたひこのおおかみ)です。本殿には三十二柱の神様が祀られていますが、中心にいらっしゃるのは猿田彦大神です。

別宮の椿岸神社(つばききしじんじゃ)には、猿田彦大神の妻神とされる天之鈿女命(あめのうずめのみこと)が祀られています。

社伝では、垂仁天皇の御代に創祀されたと伝えられています。背後の入道ヶ岳には奥宮の磐座(いわくら)があり、太古の祭祀の跡と伝わっています。

項目内容
所在地三重県鈴鹿市山本町1871
主祭神猿田彦大神
別宮椿岸神社(天之鈿女命)
社格・位置づけ伊勢国一之宮/猿田彦大神を祀る全国の神社の総本宮
創祀社伝では垂仁天皇の御代

この記事でしか読めないこと

  • 参拝者が通り過ぎやすい3つの場所(高山土公神陵・松下幸之助社・龍蛇神両地神社)
  • 同僚の車をお祓いした数か月後に起きたことと、御祈祷についての元神職の考え
  • 神職を退いたあと、「つなぎ」として神社に奉仕した私の経験

猿田彦大神は、のちに伊勢の五十鈴川の川上へ向かったと伝えられる神です。伊勢神宮とのつながりは、伊勢神宮とは何かの記事で詳しく書いています。

猿田彦大神とは?天孫降臨の道を開いた「みちびきの神」

猿田彦大神は、天孫降臨の場面に登場する国つ神です。

日本書紀の一書では、天照大神の孫・瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)が高天原から降りようとしたとき、天の八衢(あめのやちまた)という分かれ道に、ひとりの神が立っていたと記されています。

鼻が長く、背丈も高く、目は鏡のように輝いていたといいます。居合わせた神々は、誰もその目を見返して問いただすことができませんでした。

そこで、高天原にいらっしゃる天照大神の命を受けた天鈿女命(アメノウズメ)が、その神のもとへ問いただしに向かいました。

猿田彦は、天孫がお降りになると聞いて、道案内のために迎えに来たと答えます。そうして天孫一行を日向の高千穂へ導き、自分は伊勢の五十鈴川の川上へ向かった、というのが日本書紀の一書の伝えです。

夜明けの霧の中、分かれ道に立つ大きな人影を遠景から見た神話の一場面

道の分かれ目に先に立って、行き先を示す。

この働きから、猿田彦大神は「みちひらき」「みちびきの神」と呼ばれてきました。

ここで、一つだけ心に留めておいてください。

猿田彦大神は、私たちの代わりに道を歩く神ではありません。道を示す神です。

この違いが、後半の交通安全のお話につながります。

椿大神社を知ったきっかけは、松下幸之助さんの本でした

私が椿大神社を知ったのは、一時期、松下幸之助さんの本を読みあさっていた頃です。

松下幸之助さんが思い入れを持っていた神社と知り、参拝してみたいと思ったのが始まりでした。

境内には、松下幸之助さんが寄進した茶室「鈴松庵(れいしょうあん)」があります。椿大神社の先代宮司と松下さんの間に交流があったと伝えられています。

さらに、松下幸之助さんをお祀りする「松下幸之助社」というお社もあります。鈴松庵から少し進んだ先にあり、通り過ぎてしまう参拝者も多いようです。

深い木々に囲まれた境内にたたずむ、静けさのある茶室の外観

人を神様としてお祀りするのは、神道ではめずらしいことではありません。菅原道真公が天神さまとして祀られた理由にも、同じ流れがあります。

道を示す神の神社に、経営の道を歩んだ人が深く縁を結んだ。

その事実を知ってから、私は境内の一つひとつの場所を、以前より丁寧に見るようになりました。

深い森と水の境内|何度か参拝して感じたこと

椿大神社には、何度か参拝しています。

私にとって椿大神社は、深い森の中にある神社です。どこまで歩いても、木々に覆われていました。

もう一つ印象に残っているのが、水です。境内のところどころに水が流れていて、その分、空気がひんやりと涼しく感じられます。

参道もよく整えられています。境内に一歩入った瞬間から、気持ちがすっと切り替わるような清々しさがありました。

神道では、水は祓いと深く結びついてきました。穢れと祓いとはの記事を読んでおくと、境内に流れる水の見え方が変わってきます。

椿大神社の基本情報

項目内容
住所三重県鈴鹿市山本町1871
電話059-371-1515
参拝時間5月〜10月 5:00〜19:00/11月〜4月 5:00〜18:00
御朱印・授与所17:00まで
拝観料境内自由
駐車場約500台・無料(年末年始は臨時駐車場あり)
所要時間の目安約1時間〜2時間30分(参拝の仕方による)

アクセス

車の場合

  • 東名阪自動車道「鈴鹿IC」から約10分
  • 新名神高速道路「鈴鹿PAスマートIC」から約3分(ETC車のみ通行可)

公共交通機関の場合

  • 近鉄四日市駅から三重交通バス「椿大神社」行きで約55分(2時間に1本程度)
  • 近鉄平田町駅から鈴鹿市コミュニティバス(C-BUS)で約1時間(1時間に1本程度)

バスの本数は多くありません。帰りの時刻を先に確認してから参拝されることをおすすめします。

車で行く場合は、初詣期間(1月1日〜7日)の交通規制と混雑にご注意ください。

参拝の順路モデルコース(2パターン)

初めての方向け|約60分

順立ち寄る場所
1一の鳥居をくぐり、庚龍神社の前で一礼
2参道の途中にある高山土公神陵に立ち寄る
3本殿・拝殿で参拝
4別宮 椿岸神社で参拝
5すぐ隣のかなえ滝で、水の音を聞く
6授与所で御朱印を受ける

じっくり巡りたい方向け|約2時間30分

順立ち寄る場所
1一の鳥居から庚龍神社、高山土公神陵へ
2本殿・拝殿で参拝
3行満堂、獅子堂、椿延命地蔵尊を巡る
4別宮 椿岸神社、かなえ滝、龍蛇神両地神社へ
5鈴松庵で一服(呈茶)
6松下幸之助社に参拝
7椿立雲龍神社をまわり、椿会館で食事

見逃せない7つの見どころ

1. 高山土公神陵(たかやまどこうしんりょう)|猿田彦大神の御陵

参道の途中にある前方後円墳です。猿田彦大神の墳墓と伝えられています。

本殿へ急ぐ方は通り過ぎてしまいがちです。ぜひ、ここで足を止めてお参りしてください。

2. 本殿・拝殿|猿田彦大神にご挨拶

椿大神社の中心となる場所です。願い事を並べる前に、まず日ごろの感謝を伝えてみてください。

3. 別宮 椿岸神社|天之鈿女命を祀る

本殿を後にして少し左へ下ると、別宮の椿岸神社があります。

猿田彦大神と問答を交わした天之鈿女命は、芸能の神として知られ、夫婦円満や縁結びでも昔から人々が心を寄せてきました。

4. かなえ滝|椿岸神社のすぐ隣

小さな滝ですが、多くの参拝者が足を止める場所です。

「写真を待ち受けにすると願いが叶う」という話も聞かれます。

その話の真偽はともかく、滝の前で自分が何を願っているのかを確かめる時間には、確かな意味があると思います。

苔むした岩の間を静かに落ちる、小さな滝と周囲の森

5. 龍神三社|庚龍神社・龍蛇神両地神社・椿立雲龍神社

椿大神社には、龍神様を祀る三つの社があります。

社名場所の目安
庚龍神社(かのえりゅうじんじゃ)一の鳥居のすぐそば
龍蛇神両地神社(りゅうじゃじんりょうちじんじゃ)かなえ滝のすぐ奥
椿立雲龍神社(つばきたちくもりゅうじんじゃ)行満堂の広庭

龍蛇神両地神社の「両地」は、猿田彦大神のことを指すとされています。

6. 鈴松庵|松下幸之助さん寄進の茶室

境内に本格的な茶室があることに、驚く方も多いと思います。

広間でお抹茶と和菓子をいただけます(流派を問わず一般に開放)。立礼席(いす席)もあります。

7. 松下幸之助社|人をお祀りする社

先ほど触れたとおり、松下幸之助さんをお祀りするお社です。

見落としやすい場所なので、鈴松庵のあとに探してみてください。

見どころ以外にも目を向けたい場所

行満堂や獅子堂、椿延命地蔵尊は、神仏習合の時代の名残を伝えています。

椿大神社の神宮寺だった徳王寺は、明治初年の神仏分離で廃寺になりました。境内の地蔵尊は、その歴史を今に残しています。

授与品と御朱印|椿大神社でいただけるもの

御朱印(4種類)

種類備考
椿大神社本社の御朱印
椿岸神社別宮の御朱印
寿老神鈴鹿七福神
三社龍神紙での授与

御朱印の作法に不安がある方は、御朱印の意味ともらい方を先にご覧ください。

車のお祓い・交通安全の御祈祷

猿田彦大神が道案内の神であることから、中京・関西方面では車のお祓いで知られる神社です。

車のお祓いは、専用の祈祷殿で一台ずつ、大幣(おおぬさ)でお祓いを受ける形と紹介されています。

御祈祷料は「5,000円以上お志」とされています。受付時間や料金は変更になる場合がありますので、参拝前に椿大神社の公式サイトでご確認ください。

受付や予約の流れは、神社でのご祈祷とはも参考にしてください。

初詣の期間には、御祈祷の方に「おみちびきローソク」が授与されます。

お守りの扱い方

お守りを受けたあとの扱いに迷ったときは、お守りの正しい扱い方が参考になります。

季節別・年間行事のおすすめ

時期内容
1月1日歳旦祭・初詣(終日混雑、1月1日〜7日は交通規制あり)
5月12日・11月12日入道ヶ獄奥宮大祭
6月30日夏越の大赦式(茅の輪くぐり)
11月下旬〜12月上旬近隣の四日市市水沢でもみじ谷の紅葉

参拝のあとに立ち寄りたい周辺スポット

椿会館のレストラン「つばき」 参道沿いの椿会館1階にあります。名物は「椿とりめし」で、先代宮司の奥様が、遠方からの参拝者にふるまったのが始まりと伝えられています。

春泉堂の「椿草もち」 椿大神社の麓にある和菓子店の名物です。賞味期限が短いので、帰りに買う場合は日程に注意してください。

椿茶園・水沢のかぶせ茶 神社からほど近い四日市市水沢は、かぶせ茶の産地です。

湯の山温泉方面 神社から約6km、車で行ける距離に湯の山温泉があります。伊勢方面とあわせた旅程の宿泊地にもなります。

交通安全の御祈祷で、元神職がずっと考えてきたこと

椿大神社は、交通安全で知られる神社です。

ここで、私が神職時代に経験した出来事をお話しさせてください。

夜明けの山あいの道を、遠くへ走っていく一台の車の後ろ姿

同僚の車をお祓いした日

同じ神社で奉職していた同僚が、車を買いました。その車のお祓いを、私が担当しました。

それから数か月後のことです。その同僚と話す機会があり、近況を聞くと、信号で止まっていたところへ後ろから追突されたとのことでした。

同僚は、御祈祷の意味をよく理解していました。私を責めるようなことは、もちろんありません。

それでも、お祓いをした側の私は、やはり辛い気持ちになりました。

神社には、こうしたお電話が入ります

交通安全の御祈祷を受けたあとに事故にあいました。これはどういうことでしょうか。

神社では、こうしたご連絡が珍しくありません。

大切な家族を乗せる車だからこそ、不安になる気持ちは自然なものだと思います。

御祈祷は「叶えてもらう場」ではなく「宣言する場」

このブログでも書いてきたことですが、御祈祷や御神前での願いは、願えば叶うというものではありません。

神様の前で、その願いのために努力しますと宣言する場です。

交通安全であれば、その宣言の中身は、運転する自分の側にあります。

車間距離をあける。急がない。眠い日や疲れた日は、無理をしない。

猿田彦大神は、道を示す神です。示された道を実際に運転するのは、私たち自身です。

ここまで読むと、こう感じる方もいるかもしれません。

では、追突のように、自分が気をつけていても防げない事故は、どう考えればいいのだろうか、と。

私は、その問いに明快な答えを持っていません。

ただ、「御祈祷をしたから、この程度で済んだ」と考えることも、「御祈祷をしたのに事故にあった」と考えることも、御祈祷を結果の保証として見ている点では近いところにあります。

願ったのに叶わなかったから、神様を信じない。そうおっしゃる方を、神職時代に何人も見てきました。

その気持ちは、責められるものではないと思います。

けれども、御祈祷が約束してくれるのは、神様の側の結果ではありません。手を合わせた自分の側の姿勢です。

そう受けとめていれば、事故があったあとも、神様との関係が切れてしまうことはないはずです。

出発の前に

車に乗るとき、シートベルトを締める。

その一瞬に、御神前で宣言した自分を思い出す。

その一瞬に、御神前で宣言した自分を思い出す。

御祈祷の力は、神社の外に出てからの、そうした小さな習慣の中で生きてくるものだと私は考えています。

役目を終えて、自分の道へ進むということ

猿田彦大神は、天孫一行を高千穂へ導いたあと、自分は伊勢の五十鈴川の川上へ向かったと伝えられています。

先に立って道を示し、役目を果たしたら、自分の場所へ移っていく。

この場面を読むたびに、私は神職を退いたあとの、ある経験を思い出します。

退職後、神職の経験があるということで、ある神社のお手伝いに行ったことがありました。

はじめは、週に一度、日曜日だけのお手伝いでした。

ところが、責任者の方が退職されて、フルタイムで奉仕することになりました。

私はそのとき、動画編集で独立すると決めていました。その神社に長く留まるつもりはありませんでした。

けれども神社としては、責任者がいなくなった以上、なんとか次の責任者を立てて運営を続けなければなりません。その役を私に、という意向を伺いました。

私は、その役を引き受ける意思はないことをお伝えしました。

そのうえで、次の責任者が決まるまでのつなぎとして奉仕すること、動画編集をさせていただくことを条件に、とりあえずお受けしました。

しばらくして、神社の運営全般を担う方が来られました。

私はそれからもしばらく留まりましたが、新しい責任者の考え方は、私の考え方とは合いませんでした。

そこで、当初の予定どおり、つなぎの役目は果たしましたので、自分の進むべき道に進みます、とお伝えして、その神社を離れました。

朝の光が差し込む深い森の中へ、まっすぐに続く一本の道

猿田彦大神が役目を終えて五十鈴川の川上へ向かった場面は、私には、このときの自分の動きと重なって見えます。

道を示す役目と、自分が歩く道は、同じではありません。

役目を果たしたあとは、自分の道へ進んでいい。神話は、その順序を、静かに残してくれているように感じます。

あなたがこれまでに引き受けた「つなぎの役目」は、どんなものだったでしょうか。

役割が移り変わることについては、神話に学ぶキャリアチェンジにも書いています。

行ってみたくなる、椿大神社

椿大神社の境内には、深い森と水の流れがあります。

猿田彦大神、天之鈿女命、松下幸之助さんをお祀りするお社、そして龍神様の三つの社。

一度ですべてを巡ろうとしなくても大丈夫です。

車で出かける際は、まず出発前にシートベルトを締めてみてください。

次の旅は、どんな道になるでしょうか。


最後まで読んでいただきありがとうございました。

日本の神社や神様、キャリアチェンジ、動画編集についての記事を書いています。

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